M&AにおけるPPAと無形資産

M&Aの状況、PPA業務、無形資産倍率などの指標

日本公認会計士協会や各国の会計基準で公表されている
会計目的の無形資産評価、PPA実務、関連情報をご紹介します。

PPA / Purchase Price Allocation



PPAは、M&Aにおいて買手である取得企業が被取得企業を買収した際に支払った買収対価を、被取得企業に存在する資産、負債に配分し、財務諸表に計上する一連の作業をいう。ここでは、M&A推移、M&Aプロセス、M&A会計、PPA実務、最後に、無形資産の指標を示す。

M&Aのマーケット別推移

M&A件数はリーマンショックの影響で2008年から2010年にかけて減少した後、2011年を底に増加傾向となっている。そして、2020年は新型コロナウイルスの影響により、全てのマーケットでM&Aの停滞が生じているが、国内企業同士のマーケットIN-INでは回復傾向にある。

M&A情報を提供しているレコフデータのマーケット別M&A件数と金額の推移を示す。
*2000年までは合計のみ表示している

M&Aプロセス

M&Aの一般的なプロセスの中で、買収対価の交渉をするために、取引目的として対象企業(または事業)の価値評価を行う。それとは別に、会計目的として企業結合日以降1年以内にPPAを完了することが求められている(Post PPA)。また実務上、PPAにより認識・計上される無形資産によって損益の影響額が異なることから経営管理のために、クロージング前にPPAのシミュレーションを事前に行う場合もある(Pre PPA)。

買収検討

買収交渉

買収後

戦略の策定

候補選定 / スクリーニング

初期的DD実施 / 取引スキーム検討

基本合意締結交渉

DD / バリュエーション

取引条件提示 / 最終交渉

クロージング準備

取引の実行

PPA
- Pre
- Post

PMI

M&A会計

会計目的であるPPAは各国の会計基準に基づいて実施する。

日本:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」

IFRS:企業結合及び連結に関する改訂基準(改訂版IFRS第3号)、公正価値測定(IFRS第13号)、無形資産(IAS第38号)、資産の減損(IAS第36号)

米国:企業結合(SFAS第141R号)、のれん及びその他の無形資産(SFAS第142号)、公正価値の測定(SFAS第157号)

PPA実務

PPAを実施するに当たり、無形資産の評価対象を特定する必要がある。

無形資産を特定する作業イメージは、①株式価値を算定し、②その株式価値に有利子負債(時価)を加算して企業価値を求め、③買掛金等の負債の時価評価したものを加算して総資産を算出し、④総資産から売掛金や在庫等の時価評価したものを控除し、⑤有形資産の時価評価したものを控除し、➅残った金額が無形資産の算定の対象となり、➆無形資産の認識・測定した後の残余がのれんとなる。

➀の株式価値の算定では株式を100%取得したものとして株式取得の対価を算定する。また売掛金、在庫、買掛金、有形固定資産、有利子負債等は、時価と帳簿価額に大幅な乖離が無いと判断される場合には、帳簿価額を時価とみなして実施することが想定される。

無形資産の識別対象は当サイト「評価対象」、評価手法は当サイト「評価手法」を参照されたい。

株式価値の算定

有形資産、棚卸資産等の時価評価

無形資産の識別と測定

株式価値の算定

基準日BSの入手

有形資産、棚卸資産等の時価評価

無形資産の識別

無形資産の測定

のれんの計算

(参考)無形資産の実態調査

アフターコロナ・Withコロナ時代におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が注目されている。デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。デジタルシフトも同様の意味である。現在、デジタルトランスフォーメーションによって世界経済を牽引している企業は、アメリカIT大手GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)であり、無形資産を重視した企業の成長が著しい状況となっている。

そのため、企業のデジタル投資の指標として、無形固定資産倍率が紹介されている。これは無形固定資産(のれんを除く)と有形固定資産の比率で示される指標である。

参考までに、東証33業種別の無形固定資産倍率を示すと、無形資産倍率が高い企業には、金融、情報通信、サービス業が高い傾向にある一方、無形固定資産倍率が低い企業は、輸送用機器、金属、素材などの製造業となっている。



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